こんなにも愛しているのに〜私はましろ

両親への不信感 2

母が受験前最後の三者面談に、学校へ来た日。
五十音順で、私の前が西崎くん親子。ご両親が揃って見えられていた。
西崎くんはそのことが、恥ずかしかったのか、終始あの大きな背を丸くして
下を向いていた。

お父様の声が大きくて、次に廊下に控えていた私たちのところまで
聞こえていた。
無駄なことはおっしゃってはいなかったが
『少し、精神も鍛えたほうがいいので、わざと一浪させるのも
いいのではないかと、思うくらいです。』

ギャップイアー?
大学進学前にどこかで、1年間奉仕、もしくは働かせるのだろうか。

お母様から、大きな声を嗜められて、それ以降は聞こえてこなかったが
担任を前にして、ぎゅうぎゅうに絞られている様子だった。

面談を終えて、部屋から出てこられた時
私の母に挨拶をされた。

「西澤さんとは、3年間ご一緒でしたね。
陸都が、いろいろとご迷惑をかけたこともあって、、、
ありがとうございました。」

とお母様が丁寧におっしゃってくださった。
西崎くんは、そんなお母様やお父様を置いて、一人で先に行ってしまった。
やはり、きまりが悪かったのだろう。

私の三者面談は、あっけなく何ごともなくすぐに終了した。
何事もないように、私は日々努力するだけで
何なら、三者面談の必要もないぐらいの気持で高校3年を過ごしていた。

最後に私立の医学部受験も勧められたが、莫大な学費を考えると
それは私の選択肢にはなかった。

帰宅後
母からは私大も受験したらどうかと、言われた。

「お父さんも、学費の心配はしなくていいから、私大も受験した方が
ましろの気持ちが軽くなるんじゃないかって。」

「国立と公立で、、、それでもダメだったら、次の年の時に考える。」

「お母さんたち、ましろに大した財産を残してあげられるわけではないけど
せめて、あなたが勉強したいという大学には行かせてあげたい、と思っているの。
私大でも、お父さんもお母さんも働いているのだし、両方のおじいちゃんたちも
応援したいって言ってくれていて、、、」

「だから、今年は考えないけど、一浪したら次には考えるから。」

家族の心配もわかるが、今の私にはそういう言葉は、苛立ちを覚えるだけだった。
このまま
信じるように頑張らせてよ。

「それより、お母さん。」

私は話題を変えた。

「何?」

「来年、お父さんが帰任するのでしょ?」

「ええ、、、、」
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