こんなにも愛しているのに〜私はましろ
「今更だけど、一人暮らしを始めるんだって?」
母が淹れてくれたコーヒーを、大事そうに飲みながら父が尋ねた。
「そう。」
「ここから遠いのか?」
「大学の近く。」
「そうか。。。」
会話が続かない。
「私、ちょっと理恵のところへ行ってきます。お夕飯頃には帰ってくるから。」
「茉里、、、」
父が情けない声を出して、母を呼び止めるが、
そんな父を慰めるかのように、父の肩をぽんぽんと軽く叩いて、出かけて行った。
私は
今日は父に思いの丈を全て話すと、言っていたので、母には席を外していて
欲しいとあらかじめ頼んでおいたのだ。
どうやら
父は聞かされていないようだ。
「ましろがこの家を出ていくのは、お父さんのせいだろ?」
しばらくの沈黙の後、意を決したように父が話し出した。
「そんなことないよ、、、、って、いい子ぶってはもう言わない。
そうだよ。
お父さんとは一緒に暮らせない。」
「っ。。。。」
父の顔が苦痛で歪む。
「あの時の私は、、、それからしばらく経ってもだけど、お母さんに
お父さんと離婚して欲しかった。
あんな家族に対して誠実でもない人と、一緒にいてほしくなかった。」
私の一言一言が、父を切り刻んでいる。
そう言っている自分にも刃が下されて、また、自分も痛い。
でも
今日、全てを言わないと。
「だけど、お母さんは最後の一歩でお父さんとの離婚を
躊躇った。
なのに、私のためにも離婚しなきゃって言う。
結局、シンガポールへ行ったお父さんと冷却期間をおいてと
言いながら、離婚を棚上げにして、お母さんはお父さんのことを
思い続けていた。
時々こうやって、何気なく空を見上げて、物思いに耽って、、、
そういう時、お父さんのことを思っているんだなぁって。。。」
「。。。。。」
「お父さんに連絡するのも、私に気兼ねして、毎日何気なく暮らしながらも
お父さんのことを話題するのを、避けていたみたい。」
母は怖かったのだろう。
自分は父への思いを残しながら、娘の私のことを思えば、ここで
離婚しか道はない。
それがわかっているからこそ、父よりも母の方が、離婚問題を
棚上げにして来たのだ。
そこを娘に追求されたくなかった。
娘の前では、女でもなく妻でもなく、ただ母だけでいたかったに違いない。
「私も考えていたの。考えない日はないくらいに。
私のせいで、離婚してほしくないって。
離婚して、私が別れてって言ったからって、別れたなんてことに
なってほしくなかった。
私はいずれお父さんとお母さんから離れていく。
その時になって、誰かいい人がいたら再婚してなんて、、、
そんな勝手なことも言えない。
だから今、
二人がやり直すって言うんだったら、どうぞ、、、」
「お父さんたちがやり直すのは、反対か?」
父が声を振り絞るように言う。
「反対ではない。
二人で出した結論でしょ。
ただ、私は二人で出した結論に関わりたくないだけ。責任持てないし。
私はお父さんのことを信じられないし、許せない。
きっと
一緒に暮らしたら、あの日のことがフラッシュバックのように
襲ってくると思う。
まだね、、、
お母さんにもあるかもしれない。
そんな状態で、お父さんどうする?私たち二人に、対応できる?」
父はその大きな手で、顔を覆った。
残酷なことを言っているのはわかっているが、ここを誤魔化したら
私と父は前には進めない。
母が淹れてくれたコーヒーを、大事そうに飲みながら父が尋ねた。
「そう。」
「ここから遠いのか?」
「大学の近く。」
「そうか。。。」
会話が続かない。
「私、ちょっと理恵のところへ行ってきます。お夕飯頃には帰ってくるから。」
「茉里、、、」
父が情けない声を出して、母を呼び止めるが、
そんな父を慰めるかのように、父の肩をぽんぽんと軽く叩いて、出かけて行った。
私は
今日は父に思いの丈を全て話すと、言っていたので、母には席を外していて
欲しいとあらかじめ頼んでおいたのだ。
どうやら
父は聞かされていないようだ。
「ましろがこの家を出ていくのは、お父さんのせいだろ?」
しばらくの沈黙の後、意を決したように父が話し出した。
「そんなことないよ、、、、って、いい子ぶってはもう言わない。
そうだよ。
お父さんとは一緒に暮らせない。」
「っ。。。。」
父の顔が苦痛で歪む。
「あの時の私は、、、それからしばらく経ってもだけど、お母さんに
お父さんと離婚して欲しかった。
あんな家族に対して誠実でもない人と、一緒にいてほしくなかった。」
私の一言一言が、父を切り刻んでいる。
そう言っている自分にも刃が下されて、また、自分も痛い。
でも
今日、全てを言わないと。
「だけど、お母さんは最後の一歩でお父さんとの離婚を
躊躇った。
なのに、私のためにも離婚しなきゃって言う。
結局、シンガポールへ行ったお父さんと冷却期間をおいてと
言いながら、離婚を棚上げにして、お母さんはお父さんのことを
思い続けていた。
時々こうやって、何気なく空を見上げて、物思いに耽って、、、
そういう時、お父さんのことを思っているんだなぁって。。。」
「。。。。。」
「お父さんに連絡するのも、私に気兼ねして、毎日何気なく暮らしながらも
お父さんのことを話題するのを、避けていたみたい。」
母は怖かったのだろう。
自分は父への思いを残しながら、娘の私のことを思えば、ここで
離婚しか道はない。
それがわかっているからこそ、父よりも母の方が、離婚問題を
棚上げにして来たのだ。
そこを娘に追求されたくなかった。
娘の前では、女でもなく妻でもなく、ただ母だけでいたかったに違いない。
「私も考えていたの。考えない日はないくらいに。
私のせいで、離婚してほしくないって。
離婚して、私が別れてって言ったからって、別れたなんてことに
なってほしくなかった。
私はいずれお父さんとお母さんから離れていく。
その時になって、誰かいい人がいたら再婚してなんて、、、
そんな勝手なことも言えない。
だから今、
二人がやり直すって言うんだったら、どうぞ、、、」
「お父さんたちがやり直すのは、反対か?」
父が声を振り絞るように言う。
「反対ではない。
二人で出した結論でしょ。
ただ、私は二人で出した結論に関わりたくないだけ。責任持てないし。
私はお父さんのことを信じられないし、許せない。
きっと
一緒に暮らしたら、あの日のことがフラッシュバックのように
襲ってくると思う。
まだね、、、
お母さんにもあるかもしれない。
そんな状態で、お父さんどうする?私たち二人に、対応できる?」
父はその大きな手で、顔を覆った。
残酷なことを言っているのはわかっているが、ここを誤魔化したら
私と父は前には進めない。