こんなにも愛しているのに〜私はましろ
「廉を妊娠したお母さんが、いつも体調が悪くって、、、
私は兄弟ができることが、とても嬉しかったけど、こんなに
体調が悪いお母さんが、赤ちゃんを産んだら、どうかなってしまうかも
しれないっていう恐怖で、そんな赤ちゃんはいりませんって、心の中で祈っていたの。」

「。。。。。」

「そしたら、本当に元気で生まれてきてくれなくって、、、
お母さんはショックで寝込んでいるし、、、これは、きっと生まれてこない方が
いいって祈っていた私に神さまが罰を与えたんだって、、、
そう思ったら、夜も眠ることができずに、私は毎晩泣いていた。

そんな私を不審に思ったおばあちゃんとおじいちゃんが、私の不安を
全部聞いてくれて受け止めてくれて、、、、

あの時、壊れたお母さんが可哀想で可哀想で、私のせいだって、やっぱり
どこかで思う自分がいて、、、

お父さんはどこにいたのだろう?」

「。。。。。」

お父さんはいっそう青ざめて、握りしめる手が真っ白になっていた。

「記憶にないの。
そう言えばって、、、この頃それを思い出したの。

いつもいない人だったけど、お母さんが壊れた時、
お父さんはどこにいたのだろうって。」

「逃げていた、、、、

お母さんをそんなふうにしたのはお父さんなのに、
そんなお母さんを見ることが
できなくって逃げていた、、、」

「そんな卑怯なお父さんなのに、やっぱり一緒にいたいって、、、夫婦で
いたいって、、、お母さん、バカだわ。」

「ましろ、、、お父さんが全部悪い。
お母さんが大事なのに、何をやっていたんだろう。。。」

「廉の命日より、あの人を選んだのは、逃げたの?」

「ましろ、、、、、、

あぁ、
いつも命日が近づくと、茉里は自分のうちに籠って暗く沈んでいた。
それは仕方がないと思うけど、それが、自分が責められているようで、、、

あの日は、彼女に嵌められた。
こんな言い方は卑怯かもしれないが、
これを最後にと思っていて、まさか彼女の誕生日と廉の命日が一緒なんて、、、
彼女は知っていて、約束を取り付けてから、誕生日の日付を言ったんだ。

これが最後だと思って、、、ただ、それだけで、、、」

「自分の父親だと思ったら、余計情けなくなる話ね。
その日は、自分の子供の命日だからいけないって一言言えば済むのに。。

私とさほど歳も違わない人にいいようにされて、、、男の人は年齢に関係なく
どうしようもないこと、自分で手に負えないようなことをしでかす人種のようね。」

私は西崎くんや手塚くんの顔を思い浮かべながらそう言った。

「ましろは、、、子供だと思っていたが、、、お父さんの認識不足だった。」

「あんな情けない姿の父親を目の当たりにする娘も、そうそうないでしょ。
お母さんも壊れたし、、、

私のことは構わないで。
別に諸手を挙げて賛成をしているわけでも、断固反対をしているわけでも
ないから。

どちらかというと、私は私で暮らしたい。
歩み寄るには、まだまだ時間が必要だし、歩み寄れるかどうかもわからない。」

「ましろ、それだったらお父さんたちは一緒に暮らせない。」

「そんなことは言わないで。初めにも言ったけど、私を理由にして
一緒にいられないなんて、迷惑。

子供が早くに自立した、、、ぐらいに思っていてくれた方がいい。

別に、居場所がわからないところに行くわけでもないし、顔を出さないわけ
でもないから。」

「茉里が寂しがる。」

「寂しがる暇がないくらいに、やり直しに励んだら。。。
私は、まだまだ、お父さんに経済的に依存しないとやっていけないから
元気で働いて。

とりあえず、お母さんとよく話し合って。
お母さんにこれ以上我慢をさせないで。」

「娘から言われると、、、、堪えるな。。。」

「お父さん、最後に。」

「。。。。。」

「それでも不倫したら、私が全力をあげて潰す。」

「それはない!」

父も全力で否定した。

父を許したわけでもなんでもないが、父と娘ではなく、父と母が夫婦と
やり直すのは二人だけの問題にして欲しかったのだ。

このあと
父が母に、本当にましろには辛い思いをさせた。


しかし、自分がしでかしたこととは言え、

娘は怖いな、、、廉の時の話を出された時、本当に自分が終わったと
思った。
と言ったことを、私は知らない。





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