こんなにも愛しているのに〜私はましろ
陸はズカズカと部屋に上がり込むと
今まで私が座っていたソファにどっかりと
座り込んだ。

「具合でも悪いのかと思って、いろいろと買ってきた。
ゼリーに経口補水液にアイスに、レトルトのお粥、、、
それと、、、」

陸はガサゴソとコンビニのビニール袋の中を漁って、
そのうちの何点かを取り出した。

「ゼリーとアイスは冷蔵庫に入れて。
ほら、、、」

「ありがとう、、、いくらだった?」

「お見舞いだ。
早く入れないとアイスが溶けるよ。
因みにチョコは俺の。」

「今、食べる?」

「西澤さんは?」

「食べようかな。」

「じゃぁ、俺も食べる。」

小学生かと突っ込みたかった陸の言い方だったが、
大人しくソファ横の小さな椅子に座って
私はチョコではない、レモンシャーベットにスプーンを突き刺した。

「風邪か?」

「ううん。。。」

「PMS(月経前症候群)か?それとも月経中?」

陸がデリカシーもなく尋ねる。

「西澤さんが学校を休むって、高校の時もあまり覚えがないから、
心配になった。どうしたの?

顔がさ、、、というより、雰囲気がいつもと違って険しいよ。」

陸はアイスを食べる手を止めて、私を真っ直ぐに見つめて言った。

「ちょっと弱っているかなぁ、、、

家族以外を部屋にあげたり、
ここでこうやって一緒にアイスを食べたり、、、って
ものすごく弱っている、、、てことかな。」

アイスのカップに落ちる水滴をしばらく眺め
暫くして、それが自分の涙だとようやく気がついた。

陸は私の涙に驚いたのか、自分のアイスを押しやって私の前にひざまずき
握りしめそうになっていたアイスのカップを奪い取って
テーブルに置いた。

「西澤さん、、、

多分俺は西澤さんが嫌う範疇の男かもしれない。
でも、友達にはなってくれたような気がする。」

「うん、、、西崎くんは友達、、、」

「何だか幼稚園の子どもの答えのようだ。」

白い歯を見せて笑う陸に、私は自分でも思っても見なかったほど
気を許していたようだ。

「もし、話せるのなら、俺に話してほしい。
何の助けにもならないかもしれないけど。」

陸の真剣な問いかけに、私はどこにも持って行きようがなかった自分の気持ちを、
曝け出した。

どうして
あの陸にこんな話しているのだろうという疑問は、
少しも湧かなかった。

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