こんなにも愛しているのに〜私はましろ
ラウンジは、さすがクリスマスで満席だったが、西崎様お二人ということで
席がすでに用意されていた。

陸のご両親が、席を頼んで下さっていたのだろう。

「さすがクリスマス、カップルばかりだ。」

見渡しても、見渡してもカップルだらけ。
テーブルの真ん中のキャンドルの火を、二人して見つめ合う姿も、そこかしこに
ある。

「西澤さんは、毎年のクリスマスはどうしていたの?」

「双子が産まれてからは実家で。その前は、母とさっきのおばさんと
3人だったり4人でクリスマスをしたり、女学園時代の友達とクリスマス、、かな

結構地味なクリスマスで、もういっそ、飲食店でバイトして、私
クリスマスとバレンタインデー、文句なくシフト入れられます。って
アピールをしようかな、って思っちゃうくらい。」

「そうかぁ、、、親しい男友達が、いてそうだったから、そいつらと
クリスマスを楽しんでいるかと、思っていた。」

「それは西崎くんでしょ。モテるものね。
いつもきれいな人と一緒で、、、まぁ、よく変わってはいるけど。」

「親とクリスマスなんてあり得ないし、あの通りクリスマスは用事が
ある人たちだからな。

それでも小さい頃は、母さんだけが残って、兄貴と一緒にクリスマスケーキを
食べたりしていたけど、だんだんと友達と一緒だったり、、、」

「女の子と一緒だったり、、、去年のクリスマスはどうだったのかな?」

私はお茶ではなく、オーダーしてくれたシャンパンを飲んで、少し
饒舌になっているようだった。

「事情聴取になっている?」

「こういう時でもないと聞けないから。」

「気になる?」

冗談ぽく言っている割には、目が真剣な陸だった。

「気になる。。。どうだろうね。

今まで身近に男の子がいなくって、高校ではあんなふうだったし、
大学に入って、西崎くんと結構話すようになって、親しい男の子も
ちらほらできて、、、だけど、男の人の生態がよくわかんないのよね。。。」

「男の生態か、、、西澤さんが言うと、結構シビアに聞こえる、、、」

「まぁ、いろいろと見せられて経験させられたから。」

「それを言われると、きついな。
いつも女の子がそばにいる俺なんて、最低だろ?」

「何人とも同時に付き合ったり、本命がいるのに他の子と付き合ったり
していると言うのなら、最低だけど、そういうお付き合いではなかったら、
別に私が言うこともないけど。

ただ、
隣に素敵な人がいるのに、私のためにこうやって貴重な時間を
費やしてくれているのを考えたら、
相手にとって、私の存在が邪魔だろうなぁって、思う。

例えば、今みたいに二人でここにクリスマスの日にいるとか、、、
お互いが友達って思っていても、彼女が見たら、やっぱり
いい気持ちはしないと思うよ。」

「誤解がないように言っておきたい。。。」

陸が私を真っ直ぐに見て言った。

「西澤さんは、、、、西澤 ましろは、俺にとって他の誰よりも大事だ。
俺の隣にいた女の子たちは、付き合ってくれと言われて付き合っていただけで、、、
こんな言い方をしたら最低に聞こえると思うけど、、、

あの高校の時のストーカー以来、拒否をすることがちょっと怖くなって
相手の気がすめばって、いう感じでちょっと言うがままに付き合って
頃合いを見計らって、こちらからやんわりと断りを入れたり、向こうから
振られたり、、、

それに、君に好きだと言っていないのに、他の誰かから俺が西澤さんの
ことを好きだってことを耳に入れたくなかったんだ。」

「。。。。。」

「俺は西澤 ましろが好きだ。ずっと、ずっと好きだった。
俺なんかから好かれて、迷惑に思われるかもしれないけど、
西澤さんと話せなくなるくらいなら、今のまま友達でいいと思った。

友達になれただけでも、俺の中では奇跡に近いから。

でも、もう限界だ。
俺たちは大人になった。西澤さんも大人になって、あんな大人の
男性も近づくようになった。。。

他の誰かのものになるんだったら、俺は告白して砕け散ってもいい。
そのほうが、いっそ潔く西澤さんを諦められる。。。。」

「。。。。。」

「好きだ。。。」

「帰る。。。」

私は唐突に言った。
その時陸の顔が顔面蒼白になったのも気づかなかったくらいに、
思考能力がオーバーフローを起こしていた。

今まで
好きだと告白されたことがないわけではなかった、陸からの告白ほど
自分の心臓を止めてしまいそうなほどの衝撃を受けたことはなかった。

とりあえず
今は一人で考えたかった。

そのまま無言で、陸は私のマンションまで送ってくれて、部屋の前まで
来た。
私が部屋に入って、ドアを閉め鍵をかけチェーンをかける音がしたら
帰ると、小さく言った。

『カチャリ,,,,,』

チェーンをかけ終わると、ドアの向こうから

「メリークリスマス」

という囁きが聞こえて、陸が立ち去る音がした。

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