冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
「藍には怒っていない。あの男に腹を立てていただけ……久我家は周囲からのやっかみも多いから、なにかの事件に巻き込まれたかもしれないって、肝が冷えた」
心配をかけてしまった。申し訳なくて、なんて言ったらいいのかもわからない。
ハルナホールディングスのパーティーで、椿さんがゲストに好き勝手言われていたのを思いだす。
相手にされない恨みや妬みを向けられて、それでも品格を損なわないように大人な対応をし続けていた。
達者な口車で久我家を貶める罠を仕掛けたり、用意周到な手口で犯罪に巻き込もうとしたりする悪いやつがいてもおかしくない。
久我ホールディングスのホテル王の妻になるという意味を、わかっているようで全然理解が足りなかった。
「ごめんなさい」
頭を下げるしかできなかったけれど、椿さんは強く責めない。エンジンを入れて車の空調をつけながら、さらりと続ける。
「藍も被害者なんだから謝らなくていい。それにしても……勘違いをして疑わないなんて、頭の中が俺でいっぱいすぎるだろ」
「うん。本当、そうみたい」