冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
いつも、自分にはどこか劣等感がある。
瑠璃川さんに喧嘩を売られたのが響いて、椿さんの隣に並んでも、容姿も肩書きも優れていない私は、周りから認められないんじゃないかと怖い。
レシピを奪われてアンジュを辞めてから、スイーツに対してどう向き合っていいのかわからない日もあった。
今回はそんな自分を変える機会だ。絶対、結果を出してみせる。
話をもらってから三週間後の講習会当日、気合い十分で会場に向かう。
そこまでは良かったものの、会場で鉢合わせたのは、史上最低の天敵である。
「藍。お前もエントリーをするんだな」
何食わぬ顔で声をかけてきたのは宇一さんだ。
都内の一等地に店を構える有名店アンジュのオーナーパティシエがエントリーをするのは予想できた。まさか、二日ある講習会の予約まで被るなんて運が悪い。
もう関わるなと椿さんに釘を刺されたのに、まだ懲りていないのね。
あくまで仕事中の対応として会釈を返す。彼も、さすがに講習中は真剣に参加をしていたが、ふとしたときに視線を感じる。