冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 いつも、自分にはどこか劣等感がある。

 瑠璃川さんに喧嘩を売られたのが響いて、椿さんの隣に並んでも、容姿も肩書きも優れていない私は、周りから認められないんじゃないかと怖い。

 レシピを奪われてアンジュを辞めてから、スイーツに対してどう向き合っていいのかわからない日もあった。

 今回はそんな自分を変える機会だ。絶対、結果を出してみせる。

 話をもらってから三週間後の講習会当日、気合い十分で会場に向かう。

 そこまでは良かったものの、会場で鉢合わせたのは、史上最低の天敵である。


「藍。お前もエントリーをするんだな」


 何食わぬ顔で声をかけてきたのは宇一さんだ。

 都内の一等地に店を構える有名店アンジュのオーナーパティシエがエントリーをするのは予想できた。まさか、二日ある講習会の予約まで被るなんて運が悪い。

 もう関わるなと椿さんに釘を刺されたのに、まだ懲りていないのね。

 あくまで仕事中の対応として会釈を返す。彼も、さすがに講習中は真剣に参加をしていたが、ふとしたときに視線を感じる。

< 126 / 202 >

この作品をシェア

pagetop