冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 彼が、ぽつりとつぶやいた。世界を飛び回って離れていても、ずっと家族のことを気にかけていたんだ。


「親父を恨んでいたせいか、ろくに話も聞かなかったし、母さんもあえて話題を出さなかったから、そんな話知らなかったな」

「ラスベガスに引っ越す前に、義母さんとゆっくり話してみましょうよ。すぐにお義父さんとは和解できなくても、いつかは関係が前に進むかもしれないわ」


 長年の溝を埋めるのは簡単ではないだろう。

 それでも、大切にしたいが故に距離を置いて、息子の愛し方をわからなくなってしまった不器用な父親が、刺々しい態度で他人を信用しなかった椿さんと重なって見えた。


「俺は、息子だけ認知をして母さんと籍を入れないでいる親父の考えがずっとわからなかったんだ。でも、妻ができて家族の繋がりを実感したことで、久我家のしがらみから大切な女性を守りたいと願った思考が理解できるようになった……きっかけをくれたのは、藍だ」


< 195 / 202 >

この作品をシェア

pagetop