冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
「あのね。私も椿さんに話を聞く中で、お義父さんに良い印象を持っていなかったの。でも、新婚旅行に来る前に義母さんと話して、イメージが百八十度変わった」
「母さんと会ったのか?」
「うん。椿さんがラスベガスに発った後、都内の別荘に戻ってきたらしくて、食事に誘ってくれたの。そのとき、昔の話を教えてくれたよ」
『あの人はね、私と椿を捨てたんじゃないの。久我家のやっかみから私たちを遠ざけるために、わざと籍を入れないでいたのよ』
義理の母である辰巳さんから聞かされたのは、想像していなかった真実だった。
椿さんを認知したのは、豊かな生活を送るための支援として、義母さんがお願いしたからだったらしい。
「義父さんは、義母さんの誕生日には薔薇の花束を必ず贈っていたそうよ」
「たしかに、ニューヨークの自宅の玄関に、馬鹿でかい花束が生けられていたな。てっきり母さんの趣味かと思っていたけれど、親父からのプレゼントだったのか」