佐藤さん家のふたりとわたしと。
「本当信じられなくないんだけど!お兄ちゃん最悪!!」

翌朝、佐藤さん家の前でいつも通り待ち合わせ。昨日のことを引きずる私は奏志の顔見るなり早口で全部を聞いてもらった。

「ふーん」

それに対しても相変わらずの塩対応で興味なさそうだったけど。聞いてもらえるだけで気分が違うからそれでいいし。

「てゆーか大志遅くない?」

「本当だよ、こっちのが最低だよ。寝坊だとよ」

「織華ねぇーちゃんも優志も先行っちゃったんだけど」

全然家から出て来る気配のない大志を寒い中待っていた。この間に奏志は何度もあくびしてた。

「それにしてもさ、あんな優しくてバファリンみたいな正志お兄ちゃんにだよ!ひどくない!??」

話は振出しに戻りまだ同じ話をする。それでも奏志は一応聞いてくれる。 

「そーだな」

まぁ、テキトーだけど。

「ね!ね!ひどいよねっ!!!」

ポケットに手を入れ肩をすぼめて少しでも風の抵抗から逃れようとする奏志と止むことない私の愚痴。

「本当信じられない!ありえない!」

「…はぁ、あんなに匡史、匡史言っといて今度は正志にーちゃんかよ」

「え?何?」

「匡史つったり正志にーちゃんつったりお前はどっちが好きなんだよ」

「どっちが好きって、どっちも好きだよ」

「お、二股か。それは最近聞き覚えあるやつだな」

何かを思い出した奏志がニヤッと笑った。

「2人と付き合いたいーとかじゃないし!正志お兄ちゃんはお兄ちゃんみたいで好きで、匡史はただのファンだもん!」

「好きじゃねぇの?」

「好きだけど、そーゆう好きじゃない」

「ふーん…」

奏志が白い息を飛ばす。

ゆっくり、口を開いた。

「お前、好きなやついんの?」

「…え?」
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