Hello,僕の初恋
回りはじめた音楽

文化祭の翌日、カレンダーは十二月に入った。



部屋のカレンダーをめくり忘れたな、と思いながら、私は学校へと続く坂道を登る。

昨日ノゾムくんと歩いたのと同じ、長い長い階段が続く遊歩道だ。



朝の街は霧に包まれていて、坂の上の景色はぼやけて消えかかっていた。

山の頂上は見えない。



十二月ともなればもう本格的な冬だ。

昨日まで晩秋だと思っていたのに、師走に入っただけで冬だと認識するなんて、なんだか変な感じがする。



そういえばノゾムくんは十二月生まれだってアヤが言ってたなぁなんて、

そんなことを思い出した。



昨日から、気がつけば彼のことばかり思い出している。



「ノン、おはよ!」



後ろから明朗な声がきこえて、私は振り返った。

直ちゃんだ。

直ちゃんはいつも通りきっちりと髪を整えて、ブレザーの上からベージュのコートを羽織っていた。

隣の街のデパートでお揃いで買ったこのコートを、私も今日身に着けている。

同じような格好をしているのに、どうして私のはヨレヨレで、直ちゃんのはきっちりしているんだろう。

小学校の頃から毎日思っているけど、その謎は一向に解けない。
< 55 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop