Hello,僕の初恋
恋の音

ノゾムくんたちが時々練習に使っているという音楽スタジオは、駅前通りを渡った先の賑やかな場所にあった。



初めて訪れるその建物に、ノゾムくんのあとについて足を踏み入れる。

受付で話をしているノゾムくんの後ろに立って、きょろきょろと周りを見回した。



「予約五時半からだけど、空いてるからもう入ってていいっすよ」



受付のお兄さんがそう言うのを聞いて、ノゾムくんは満面の笑みでお礼の言葉を述べた。



楽器ケースを背負った彼の後を追いかけて、『B』と書かれた部屋に入る。

中は思ったよりも広くって、ドラムやキーボード、それから大きなアンプなんかが設置されていた。

おじいちゃんの音楽部屋にあったものより、もっともっと大きなアンプだ。



興味深く室内を観察する私を見て、ノゾムくんが柔らかく笑う。

高校生なのにこんな立派なスタジオで練習するなんて、やっぱり彼らは雲の上の存在だな、と思った。



「ちょっと、聴いてみる?」



ノゾムくんがそう言ったので、私はこくりと頷いた。

楽器ケースから出てきた緑色のベースに何かの線が繋がれて、その線の反対側が壁側のアンプに接続される。

ノゾムくんはベースを肩からかけて、アンプの設定を少し弄っていた。
< 92 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop