乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
まるで、いい思い出だった―――と、言うような口ぶりに私は悲しくなった。
机の上に契約書と書かれた三文字が見えた。
え?契約?

「そ、それっ!!」

見間違いなんかじゃない。
白い紙にしっかり漢字三文字で契約書と書いてある。

「これですか?お父様が私に出してきた新崎から自由になるための条件です」

「じょ、条件っ!?」

「私が婚約者に嫁ぐことよりも新崎に有益なことができるなら、自由にしてやると言われました。それが無理なら、新崎のために黙って嫁げと」

「有益って……そんな……血も涙もないですね……」

「このままだと私は父にとって、ただの穀潰しでしかないと言われました。それなら、新崎で働かせてほしいとお願いしたのですが、私より優秀な人間がいて間に合っていると断られました。その通りなんですけど、はっきり言われると堪えますね」

ひ、ひどい。
あんな素敵な『ときラブ』の指輪を作ってくれた詩理さんはなにもできない人じゃない。
悲しげに笑って目で詩理さんは目を伏せた。
まだ諦めてはいけない。
そう詩理さんに伝えたいのに。
でも、監視の人が。
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