乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!
第10話 夫【響子 視点】

「なんなのよっ!月子のくせに生意気なのよ!」

バシッとクッションを叩きつけた。
今日一日、最悪だった。
あの新崎(あらさき)天清(たかきよ)はただ者じゃなかった。
跡目争いで負けたとはいえ、さすが新崎グループの長男。
父は彼が出す案に『いいね、すばらしい』なんて、わざとらしく誉め称え、私が関わる企画を全部白紙にされた。
私が自分を捨てたからって、仕返ししてるのよ!絶対!
でも、一番困るのは私の父よ。
まだ初日だっていうのにあの男の傀儡(くぐつ)状態。
私の言葉なんて一切耳に入ってない。
父だけじゃない。
初めは彼を警戒していた社員も少し話をしただけで、心を開いて親し気に会話をしているし、書類は一目見ただけで全て記憶してしまう。

「噂通り、優秀みたいね」

ぎりっと爪を噛んだ。
スーツも上等の物でオーダーメイドだと社員達が騒いでいた。
その上、月子にシャネルのアクセサリーとバッグを買い与えて!
ネイビーのタイトワンピースのスーツは月子によく似合っていて、出社した時と雰囲気が変わり、帰る頃には他の社員の注目を集めていた。
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