乙女ゲームオタクな私が妹の婚約者と結婚します!

ね、眠れるわけないでしょー!
腕枕をし、額を私の額にあてた。
顔が近すぎて、心臓がバクバクいっていた。
天清さんは目を閉じ、眠ってしまったのか動かない。

「……もう……眠って?」

返事はない。
そうだよね。
実際の所、私より環境が変わってしまったのは楠野に婿に入った天清さんの方だ。
慣れない場所で疲れているはず。
それなのに私を助けてくれた。
水をかけられた後も響子が地下室に来た時も。
あれから、嫌がらせをされていない。
私を唯一、蔑むことなく守ってくれる人。
そう思ったら、失いたくないと思ってしまった。
いつか、天清さんは私に飽きて『響子のほうがいい』って言うのに決まってるけど……。
でも今は私のそばにいてくれる。
それだけでも十分だと思おう。
贅沢は望まない。
腕の中は心地よくて暖かいのだから。
人の体温ってこんなに暖かいのだと初めて知った。
< 48 / 214 >

この作品をシェア

pagetop