籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
「いいよ。もう復縁したいとか思ってないし、それまでの関係だった。ただ、運命の相手だと思ってたから…」
「優しいなー。そういうところやっぱり育ちの良さを感じる。はすみは全然人の悪口言わないもん」
「心の中じゃドロドロだよ」

夏子が噴き出すように笑い、私もつられて笑う。きっとこの別れが思い出になる日が来るかもしれない。

…―…


仕事を終えるとすぐに不動産会社と連絡を取り合う。
早く家が決まらないと本気で困る。野宿になるしそもそも自宅から荷物を運び出さなくてはならない。
受話器口の向こうで今週末に内見できる部屋は見つかったが入居日が厳しいことを伝えられた。

とりあえずは保留ということになった。

幸太郎からの連絡は今日もない。それを待っている自分も嫌だったが無意識にスマートフォンを確認してしまう。



夜空を見上げながら何度目かのため息を溢す。
こんな時、人恋しくなるのは当然だ。どうしてかロンドンで出会った彼を思い出した。帰国したら一度会ってほしいと言われていたが、当初は会うつもりなど微塵もなかった。それなのに急に和穂さんに会いたくなったのは失恋したからだろうか。
いや、単純に興味があった。
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