秘密と家族
嫉妬
琉雨が目を覚ます。
「ヤバい…あのまま寝てしまった……」

腕の中に、琉梨がいない。
「は?なんで?」
ムクッと起き上がると、丁度琉梨が部屋に入ってきた。

「あ、琉雨。起きた?
琉雨、着替えずに寝たんだね!スーツ、皺になるよ?
着替えた方が━━━━━━」
「どこ行ってた?」
琉雨らしくない、鋭い視線と口調。

「え?る、琉雨…?」
「琉梨、答えて。
どこに行ってたの?」
「トイレ…」
恐る恐る答える、琉梨。

「そう」
「琉雨…怒ってるの?」
「いや」
「良かった。とりあえず琉雨、着替えた方がいいよ?」
「うん。でも…琉梨、おいで?」
琉雨が、両手を広げて言った。

「うん…」
琉梨はその腕の中に収まった。

やっぱりこれだ!
強さと温かさ、感触、この琉雨の香水と煙草、琉雨独特の香り、心臓の音。

琉梨は酔ったようにしがみついていた。

「琉梨」
「ん?」
「昨日、何してたの?」
「舞子と誠史くんと、誠史くんのお友達とご飯行ったよ」
「誠史?あー、舞子の彼氏か。友達……
何かされなかった?」

(何か……)
ふと、抱き締められたことを思い出す。
「………ううん」

「そう…」
自分以外の臭いがついた理由が聞きたかった、琉雨。
今すぐにでも、力ずくで聞き出したい。
香水や煙草の臭いがはっきりつく程の、何をされたのか━━━

でも、できない━━━━━

琉梨にだけは、優しく穏やかな琉雨でいたい。
できる限り………

しかし不意の琉梨の言葉が、琉雨のギリギリで抑えていた理性を崩壊させた。

「琉雨」
「ん?」
「着替えた方がいいよ。スーツ、皺になってる…!」
「うん、そうだね」
「待ってね。
スウェット、取ってくる」
「ありがとう。
てか、ずっと気になってたんだけどさ」
「ん?」

「なんで俺の、トレーナー着てるの?」

「へ?
━━━━━//////あ、ご、ごめんなさい!!」
「怒ってるんじゃないよ。凄く可愛いよ。
…………琉梨、俺を誘ってるの?」

「あ、いや…その、あの…/////」
顔を真っ赤にして、あたふたする琉梨。

そんな姿も可愛らしい。

「でも俺からすれば、その格好は誘われてるとしか思えないよ?だから、抱いていい?」
首を少し傾げて言った、琉雨。
ベッドを降り琉梨に近づく。そして、琉梨を抱き上げた。

「スウェット……琉梨を抱いてから着るから、まずは抱かせてね」
そう言って、ベッドに優しく下ろした。
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