ワンコ社長は小さな秘書を手放せない


 柊にもちゃんと弱点はあったのだ。料理なら簡単なものは作れるから、今度作ってあげたら喜んでもらえるかもしれない。


 そんなことを密かに考えながら、柊の家の中に入った。



「おじゃまします」



 なんだかんだ、家に来るのは初めてだ。どんな家なのだろうと気になって、キョロキョロと色々なところを見てしまう。



「美桜ちゃん、こっち」



 リビングに案内されると、テーブルの上にご馳走が乗っているのが見えた。


 しかもまだ温かそうだ。どうして?

 注文したんだよね? 普通、もう冷えてしまっているんじゃないの?



「帰ってくる時間に合わせて届けてもらったんだよ」



 さすが社長だ。そんなことができてしまうなんて。

 聞いてみると、ここの管理人さんが運んで用意してくれたらしい。


 そんなことまでしてくれるんだ――。



「冷める前に早く食べちゃおう」



 手を洗って、コートをハンガーにかけてから私たちは並べられている料理の前に座った。



「すごい量……」


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