僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「はい、俺が一画ね」
ハルはそう言って小石を使って地面に字を書いていた。
「はぁ、はぁ、なっつかし~。先に『王』になったほうが勝ちだっけ?」
「そう、その日家に帰るまで王様になれるの」
「ぐぇ、もうやだぞ、蛙飛びとか、10本ダッシュとか」
「そんなんじゃ甘めーな」
誰ものるなんて言ってないのに、勝負は続行で、何を賭けているかもわからず夢中になってた
昔みたいに苦しんでる俺をみてあざ笑うのか、それとも…………
*****
俺の横には三画しか書かれてない『王』の字。
ハルの横にはしっかりと四画書かれてた。
「彼氏がいるのは知ってる、だけどもう一回聞くから正直に答えろ。王様命令だ」
「—————うん、わかった」
ハルが真面目な眼差しで俺を射貫いてくる。
さっきまでのおふざけなしの、真剣な顔つきになっていた。
「俺は、恋愛対象にならない?」
「…………………」
やっぱり…
目線を落として静かに首を振ることしかできなかった。
ならない―――よ。
お前とは、こうやっていつまでも遊んでたい。
この恋を知らなかったままの気持ちでいたいんだ
好きとか嫌いとか関係なくさ
寂しさまぎれにお前の身体をむさぼるところなんて、見せたく・・・ないよ。
せめても、お前の記憶の中にいる俺は、これからもあの時のままの姿がいい。
無邪気に野球やって笑ってた俺の記憶を、頭の隅にそのまま残しておいてほしい。
そういう存在が、一人でもこの世に居てほしいだなんて、身勝手極まりないかもしれないけどさ。
俺は、ハルを汚したくないんだ。
だって、ハルに対して恋の感情はわかないのだから。
「そっか」
「ハルは、ちゃんとした『女の子』探してよ」
「えっらそうに言うなよ、二度もフった本人がよ」
「………わりぃ」
「あーあぁー、俺モテんのに、あほくさ」
「ごめんな」
気まずい沈黙が流れた。
「…………、王様命令」
「……はい」
「ちゃんと定期的に帰って来いよ。家族悲しませんな」
「うん」
でも、これからハルに合せる顔…ないな。