僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

失いたくない


この前の公園デートからまともに三人で出かける機会も少なくなった。

俺も、就職に有利な資格を取ろうと、勉強に奮闘していた。
相変わらず実家に出入りしているハルからアドバイスをもらいながら。

なぜか、人一倍ハンデがある気がして、就職探しに向けての熱が大きくなる。
スキルを身に着けて、その不安を埋めようと躍起になっていたんだ。





そんなこんなで、忙しい毎日だけど、バイトが入ればそれに集中して、不備のないように努める。
俺のバイト先は、事故がおきる可能性があることもある。

イベントには、配電やスピーカー、照明など、設置の仕方によっては人身事故に繋がりかねない。
スタッフが全員で不備のないようにことを進めなくてはならない。

なにかあれば、一人のミスでも、気づけなかった自分たちの責任でもある。

だから、一人一人の仕事への姿勢=安心して楽しめるイベント。

おおげさかも知れないけど、俺はいつもそう言う気持ちで仕事している。

でも、今回のイベントのメイン達は、そんな気持ちが少し抜けているようだった。
今日はインディーズのイベントだけど、結構名の通ったバンドが揃う。

ここの会場は小さめだけど、300人は入る。
すでに完売してるらしいから、混みあうのは目に見えていた。

夜の開演に向けて、昼近くから逆リハが行われる予定だった。

トリのバンドが一番にリハしなきゃいけないのに、30分経ってもくる様子がなかった。

主役が遅れてどうすんだ、後輩や誘われたバンドは地方各地から来てるのに…
有り得ないよ。

このままじゃ、全体のリハ時間が削れてしまうし、最悪トップのバンドはリハなしになってしまう。

トップはトリのファンの高校生バンドだって聞いていた。
憧れのバンドと同じステージに立てるのに、リハなしとか可哀そうすぎる。


「島ぁ!まだ来ねーか?」

「楽屋見てきます!」

確認したけど、居るのは他の出演者ばかりで、どうしようもなく時間だけが過ぎていく。

連絡をしたくとも、誰も連絡先を知らなくて、仕方なしに準備が出来ているところから順次してもらう形にした。

中には、15分の持ち時間を5分で、しかも最低限の確認だけで演出の照明はつけっぱでいいとか言ってくれる人たちもいた。

「俺らは、何とかなっから、手短でいいよ。それより、あの子らに時間作ってあげよう。ライブハウス、初めてなんだってよ」


少し顔を張り詰めた高校生バンドの子たちを見ながらそう言ってくれた。

「ありがとうございます!そうさせてもらいますね」
「ああ、あんたが謝ることじゃないよ」

ほんと、その通りだ。なんて心の中で思った。


少しづつ時間を詰めていけば、何とか開演に間に合いそうと思った時に、トリのバンドが会場入り。

「すみません!!取材が押して遅れました!」

取材?は、さておき。腰が低いのは一人だけ。

楽器を持っていないところをみると、メンバーじゃないのかもしれない。
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