僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~


「晴?もう電車なくなるよ」
「あっそう」
「・・・・」
あっそうって・・・。

「帰れなくなるよ」
「うん、じゃあ帰らない」
「何言ってるんだよ」

「いいじゃん、だって俺は”恋愛対象外”なんでしょ?」

まだ根にもってるのか。

「就職決まったんだ、だから比較的暇なの」

「そうなんだ…。———でも、こっちが暇じゃないんだけど」
「・・・は?あっそう」

もうやめた。
こいつと張り合うには、エネルギーが足りない。

そのまま、横になって晴がプレイする画面を見つめる。


「凄いレベルだね。全員マックスじゃん。HPも攻撃ダメージも限界突破してるし」
「ん、あの頃の続き」
「あの頃?」

「お前が、最強のモブ倒すの一緒に見たいからってさ、先進めるなって言ってたじゃん」
「そうだっけ?」
「おまえってさ、ほんと・・・」

その先は言葉に出してくれなかった。

画面上で動く主人公を見つめる。

街に入った時、戦場フィールドに入った時、その場所場所でBGMが変わって、それを聞くたびに懐かしさが込み上げる。


自分も好きだったけど、ハルみたいに上手にできないし、コツコツとレベルを上げるのも苦手だったから、ハルのプレイを見ながら興奮してたのを思い出した。

「ハル、就職おめでとう」

「ん、祐もな、おめでと」

覚えてたんだ。

「ありがとう」

誕生日はまだ先だけど、やっぱり覚えていたんだ。
「これ、やる」

そう言って渡してきたのは、神社の名前が入った袋だった。

「なにこれ」
「魔除け」

「魔除け?」

「そう、”魔除けミサンガ”」

「水晶って書いてるけど…高かったんじゃないの?」

「そんなに高くない。それ、人の中にある悩みや嫌な気持ちを浄化してくれるらしいぞ」

「なんだよ、それ」
「今のお前にピッタリだろ」

そうだな、ピッタリすぎて文句言えない。

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