客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
あの夜をもう一度
 朝食を済ませた二葉と匠は、ロビーを抜けて駐車場に向かっていた。

 しかしロビーに入った頃から、匠の様子が少しおかしい。辺りをキョロキョロと見回しながら、足早にロビーを抜けようとする。

 二葉は眉をひそめた。怪しい……明らかに動揺している。

「匠さん、どうかした?」

 体をびくりと震わせ、作り笑いを浮かべる。

「ん? な、なんでもないよ! 今日もたくさん巡るから、早くしないとって思ってただけ」

 二葉は怪訝そうな顔をした。何か隠してる……?

 でもまぁ確かに時間との勝負でもある。そこまでは深刻な様子にも見えないし、今じゃなくても良いかしら……二葉は自分を納得させると、駐車場に停めてあった匠の車に乗り込んだ。

「もしかして、今日一日で結願出来たりするかな?」
「うん、この調子ならたぶん出来ると思うよ」
「本当? そうしたらね、明日行きたい場所があるんだけど……」
「いいよ、どこ?」
「やった! あのね、三峯神社と川下りに行きたいの。秩父に来ると巡礼して帰るだけだったから、ちょっと観光もしたいなって思って」
「了解。じゃあ帰る前に寄って行こう」
「ありがとう! 楽しみ増えちゃった」

 明日が楽しみになったとはいえ、今日巡る場所は二葉が気に入っているところが多いため、朝からずっとワクワクしていた。
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