客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 真梨子はテーブルに肘をつき、ふっと目を伏せる。

「あれから、夫と何度か話し合いの場を持ったの」

 淡々とした口調で話し始める。

「今までも話し合いはしてきたの。私の気持ちを理解して欲しい、でも彼は『わかってる』の繰り返し。最後は不貞腐れて出て行く始末。朝まで帰ってこない日もあって、私は気が気じゃないのに、帰ってくるとまるで『反省した?』みたいな顔で見るの。だから私も面倒になって、彼を怒らせないように、お互いの意見の中間を探すような感じになってた。二人でも楽しく過ごせるよ……みたいにね」

 そこまで静かに、諦めたように話していた真梨子が、突然パッと目を開く。

「でも今回の話し合いは少し意味合いが違ったかもしれない」
「意味合い……ですか?」
「そう。今までは言いたいことを言い合って、お互いの納得のいく……まぁ都合の良い着地点を探していたのよね。でもあなたに言われて気付かされたの。だから私もある程度の決意を持って話をしたわ」
「それは……私が聞いてもいいお話ですか?」

 真梨子は不機嫌そうにため息をつく。

「女子トークじゃないの? そのために呼んだんだけど」
「す、すみません!」
「話していいの?」
「もちろんです!」
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