客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 ふっと笑った真梨子を見て、二葉はドキッとした。本当になんて魅力的な人なのかしら……。私だって惚れてしまいそう。

「私ね、あなたと話してからいろいろ考えたの。私が一番望むことは何なんだろうって。夫婦仲なのか、それとも子どもなのか、仕事なのか……。それを考えた時に、私はやっぱり子どもが欲しいと思ったの。自分が子どもが出来ない体なら諦めるけど、何も試していないのに諦めることは出来ない」

 何故だろう。この間話した時とは別人のような気がする。

「二人で同じ方向を向けるか、同じ目的に向かって頑張れるのかを見定めようと心に決めて、夫との話し合いに臨んだわ」
「それって……」

 真梨子はにっこり微笑んだ。

「あなたが言ったのよ。私が望む未来を選べって。私はね、私の願いに寄り添ってくれない人と一緒にいる理由を見出せなくなったの。この先もしかしたら一生独身になるかもしれない。でも不満を抱えたまま我慢して生きるよりは、少しでも希望を持って、自分らしく生きた方がきっと楽しいと思わない?」
「……私は真梨子さんが納得出来たのなら、それを応援するだけです。でもそのこと、ご主人にはお話されたんですか?」
「……実はまだなの。だけど私の心はたぶん変わらないわ。私がそんな風に考えてるなんて、きっと微塵も思ってないでしょうね……」

 少し寂しげな表情を浮かべると、カクテルをじっと見つめる。

「若い頃、よくこういうお洒落なお店とかに連れて来てくれたの。デートのたびに車に花束が置いてあったり、私の好きなお店のチョコレートを買ってきてくれたり、何かプレゼントをくれてね、そういうのが嬉しくて、ちょっとお姫様気分になって浮かれていたのかもしれない。本当に大事なのはそんなことじゃなかったのにね……」
「でも、やっぱり自分のために何かをしてくれたことって嬉しいと思います。恋人の期間ってキラキラしてて、ドキドキしますよね」
「そうね……そう考えると、あの人は"恋人"としては素晴らしかったけど、"夫"向きではなかったのかもしれないわ……」
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