客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 すると不意に匠が二葉の手に自分の手を重ねた。

「良かったらさ、今日の仕事の現場を見てく? 実は天空チャペルでイベント準備してたんだけど、社員でもなかなか入る機会がないじゃない?」
「えっ、いいの? すごく行きたい」

 天空チャペルはこのホテルの人気スポットで、まるで空に浮いているように見えることでその名前がつけられた。

 結婚式やブライダルフェアで埋まっていることが多く、本社で仕事をする人間にとっては、なかなか足を踏み入れることの出来ない場所だった。

「でも匠さん、仕事は大丈夫なの?」
「ん? あぁ、みんなまだ戻って来ないし、ちょっとだけならね」

 匠は二葉の手を引いて店を出ると、エレベーターに向かった。到着したエレベーターに乗り込み、屋上のスイッチを押す。

「どんなイベントなの? やっぱりブライダル関係?」

 二葉は気になり尋ねる。

「うん、まぁそんな感じかな」
 
 しかし匠の返答はどこか曖昧なものだった。なんだろう……ブライダルじゃないってこと?
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