客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 これが彼の苦しみと悲しみの正体だったんだ。先生への感情の正体がわからず、促されるまま彼女と体の関係を持ち続けている。

 でも……そんな苦しい気持ちになるのなら、匠さん本人は気づいているはず。きっとわかっていないフリをしてるだけ。

 二葉はハッとする。それって私と同じじゃない。気持ちがないのはわかっているのに、ズルズルと関係を続けてしまっている。

 二葉は思わずため息をつく。私たちはどこまでも似たものどうしなのね……。

 二葉は首を傾けて匠にキスをする。それからゆっくり彼の方へ向き直り、彼の足の上に跨ぐように座る。

「私も人のことは言えないけど、匠さんには自分の気持ちを大事にしてほしい。私はたった二日しか一緒にいないけど、それでもあなたは優しい人だと思うもの。その人が辛い思いをしていると、私も辛くなる。だから匠さんが望む未来を選んで」

 匠は目を見開き、瞳から一筋の涙が溢れ落ちる。それを二葉はそっと拭うと微笑んだ。

「相当我慢してましたね。いいんですよ、泣いたって。私たちはきっと疲れちゃったんです。だから癒しを求めてここに来た。きっと心に休息が必要だったのよ」
「……でも俺は、君に一番癒されてる……」

 匠は二葉の腰を浮かせると、ゆっくり彼女の中へ入っていく。

「心も体も癒せる相手との休息なんて、これ以上のものはないよね….」

 私は彼に慰められて、私は彼を癒せた。私たちの出会いは偶然に似た必然であるかのよう。そんな夢みたいなことを思いながら、私は匠さんの胸に倒れ込む。

 彼の早鐘のような心臓の音を聞いて、私はこの上ない幸せな気持ちに包まれたの。
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