客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
* * * *

 秩父から帰って数日が経ち、二葉は別れを切り出すために慎吾の部屋を訪れた。

 ドアの前から見える公園のベンチ。あの日あそこに座りながら、私は悲しみに暮れていた。なのに今はどこか冷めた気持ちでいた。

 ドアか開いて部屋着の慎吾に中へと招き入れられると、何故か嫌悪感を覚える。あんなに好きだった人なのに、何でだろう。

「今日は慎吾に話があってね……」

 すると慎吾の手が、二葉の服の下に乱暴に入ってくる。

「まぁまぁ、最近あまり相手してやれなかったからさ」

 唇を塞がれ、服を脱がされても、二葉の体はなにも反応しない。むしろやめて欲しかった。

 あぁ、これではっきりした。私はもう慎吾を好きじゃないんだ。

「なんだよ、相変わらず感度悪いな」
「……違うよ。慎吾のセックスが下手なんだよ。私のせいにしないで」

 二葉は慎吾の体を突き放すと、床に落ちている服を拾って着る。

「はぁっ⁈ 何言ってんだよ……⁈」

 逆ギレしそうになった慎吾に、二葉はスマホの画像を突きつける。

「慎吾、浮気してるよね」
「そ、それは……」
「言い訳はいらない。これが答えだもの。だから私も浮気した」
「はぁ? なんだよそれ!」
「仕返し。そうしたら、その人のセックスなら私は何度もイケたの」

 慎吾の平手が飛んでくるのが見え、二葉は慌てて避ける。

「女に手を挙げるなんて最低」
「お前が浮気するからだろ⁈」
「あんただってしたじゃない。自分は良くて、私はダメなの⁈ おかしいじゃない!」

 なんでこんな人を好きになったんだろう……。前は優しかったのにな……。
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