客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜

 二葉は荷物を持つと、玄関に向かう。

「もうお終い。別れよう。じゃあね」
「おいっ! 二葉!」

 二葉はドアを飛び出すと、駅まで猛ダッシュする。元陸上部だもの、ブランクはあっても普通の人よりは早いはず。

 しかも慎吾は裸だから、着替えるのに時間がかかって追いつくわけがない。

 駅に着いて電車に乗ると、慎吾から着信が入る。それを拒否する。

 続けて着信拒否設定にしてから、慎吾の番号を消した。

 不思議と清々しい気持ちになる。急に匠の顔が頭に浮かび、胸が苦しくなる。

 会いたいなぁ……でも無理。私が知っているのは、名前と車のナンバーくらい。会えるわけがない。

 私も一歩踏み出す時なのよ。私らしくいられる相手を探さなきゃ。
< 25 / 192 >

この作品をシェア

pagetop