客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
二葉は荷物を持つと、玄関に向かう。
「もうお終い。別れよう。じゃあね」
「おいっ! 二葉!」
二葉はドアを飛び出すと、駅まで猛ダッシュする。元陸上部だもの、ブランクはあっても普通の人よりは早いはず。
しかも慎吾は裸だから、着替えるのに時間がかかって追いつくわけがない。
駅に着いて電車に乗ると、慎吾から着信が入る。それを拒否する。
続けて着信拒否設定にしてから、慎吾の番号を消した。
不思議と清々しい気持ちになる。急に匠の顔が頭に浮かび、胸が苦しくなる。
会いたいなぁ……でも無理。私が知っているのは、名前と車のナンバーくらい。会えるわけがない。
私も一歩踏み出す時なのよ。私らしくいられる相手を探さなきゃ。