客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
 あれから四人で観光を楽しみ、宿に戻るとあっという間に匠は女性社員たちに囲まれてしまった。

「じゃあ後で宴会場でな」

 木之下に言われ、二葉と美玲はお辞儀をして部屋に向かった。匠は木之下に腕を引っ張られていくのが見えたので、二葉は少しホッとした。

「木之下さんと副島さんって、意外と仲良し?」
「かもね。なんだかんだお互いを認め合ってるというか、ライバル視してるのは木之下さんだけだし」
「なるほど」

 二人が部屋に戻ると、中では京子と彩花が待ちくたびれたかのように畳に寝転がっている。部屋をあてがわれたものの、女性社員たちは勝手に仲の良いメンバー同士になれるように部屋をトレードしていた。

「おかえりー。思ったより遅かったね」
「ごめんねー。木之下さんと副島さん、なかなかお土産決まんなくて付き合ってた」

 "副島"と聞くなり、彩花が食いついてくる。

「えっ! なんなの、その特殊なメンバーは!」

 すると美玲がニヤニヤしながら二葉を指差す。

「これがさ、もうびっくりなんだけど。副島さんったら、二葉といたいがために他の女性社員の誘いを断ったのよ。あれはもう重症だね。二葉にぞっこんラブよ。お腹いっぱいになっちゃった」
「えーっ! そんなレアな光景が見られたの〜? 私も一緒に行きたかったなぁ。私なんか、おじさまたちのエスコート役になっちゃって。参ったわよ……」

 だから畳に突っ伏したまま動かないのか。二葉は思わず苦笑いする。

「でも良かったじゃない。おまけがいたとはいえ、社員旅行デート出来たんだし。楽しかった?」
「うん……すごく楽しかった」

 二葉の満足気な表情を見て、三人も頬が緩む。

「じゃあ夕食の前に温泉行こうか!」
「賛成〜!」


 
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