だから今度は、私がきみを救う番



「高屋、たのしーね」

「うん、楽しいね」



踏切をこえて、駅舎の前を通りすぎ、県道を進んでいく。

学校の近くを通る時はかなりドキドキした。



夏の匂いでいっぱいの風に押されて、自転車はどんどん速度を増す。

土手道へ続く上り坂はさすがに一回降りたけど。

土手道に上がったらもう一度彼の腰に抱きついて座って、自転車は進みはじめた。



風が、ふたりを加速させる。

七月の熱風が、原くんの金髪と、私の黒髪を揺らす。



水面はきらきらと輝いて、空は快晴、空も水面も見事なブルー。

このまま空だって飛んでしまえそうだなって、そんなばかなことを本気で思った。



「ね、高屋」

「なぁに?」

「高屋は俺と一緒にいてくれる?」



なぁに、その質問。


私はふふっと笑って「うん」と頷いた。



きみの質問に込められた意味も、きみの気持ちも。


きみが抱えているものだって、何ひとつ知らなかったのにさ。



ばかみたいだね。


きみに好かれて調子に乗ってたんだ。



「一緒にいるよ」



そんな、小さな約束を交わして、私たちは河川敷を駆け抜けていく。

夏の風に乗って、どこまでも行けそうな気がした。



私は恋のときめきと楽しさに浮かれて、ただ彼にしがみついていた。


< 68 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop