吐息ごと奪ってよ
目の前にはひーくんじゃない男


聞いてないのに、黒辻穂高は自分のことを事細かに伝えてきた。


24歳、三人兄弟の三男で、実家は活け花の黒柳流で、自分には活け花の才能はないからと、早々に離脱し、経営に回ったのだとか。


好きな音楽は洋楽全般、ジャズにポップスにロック
趣味は活け花とは程遠いツーリング。


でも、なんとなく分からないでもない。


プレッシャーから逃げるには、全く異なる方向に 行きたくなるものだ。



「で、花子さんは休みの日何してるんですか?」


「特に、、、何もないわ」


なんてのは嘘

本当はフラワーアレンジメント

女子力をあげたくて、習い始め今では本業に出来るまでになった。


それもこれも全部、ひーくんの影響。

ひーくんの何気ないひと言で、やり始めたのだから。

―お店に花活けれたら素敵よねー


ってさ。


< 10 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop