俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
どのくらい、時間が経ったのだろうか?
湧き上がってくるような、熱が引いて、久しぶりに身体が軽く感じ、顔にほのかな光を感じた。
「アミール!、カミール!」
遠くの方から、聞き覚えのある、甲高い声が聞こえて来た。
(ああ、アレは、俺の周りに纏わりつくキーキーッと、猿のような声で騒ぎ回る雑音だ)
昔から、俺は彼女が苦手だった。
「カミールは真っ赤な顔して、必死にに付いて来て面白いね」
なんて言っていたが、一言声を掛けると、意味もなくキーキーッ、キャーキャー甲高い声で騒ぎ、腕を絡めて、纏わりついて来るのが、気持ち悪かった。
父に、大事な取引先の娘だと言われ、後々は俺かカミールの婚約者にどうだ?と、勧められた。
カミールは、
「僕はそもそも、女性に興味が無い」
と、いきなり衝撃的な事をカミングアウトし、両親を驚かせた。
必然的に、彼女は俺に当てがわれたが、正直、俺も要らない。
仕方なく、婚約者候補として、何度かエスコートして色々な所を回ったが、殆どが買い物で、アレが嫌い、コレが欲しい、もっと、もっとと、彼女の物欲は増すばかり。
あの子と話すな、それを着るな、これをしろ、あれしろと、イメージを壊す様な行動をするな、と、兎に角、俺のやる事に、いちいち口を出して来て、邪魔で仕方ない。
彼女が見ているのは、所詮は俺の石油王というステータスと、連れて歩くと、見栄えのする、この顔だけ。
自分の思い通りにチヤホヤして、動かなければ、許せない様で、俺がどう考え、何を思っているかなんて、関係ない。
(…… これ、本当に同じ生き物か?!)
建設的に考えてみても、彼女といる事に意味を見出せない。
時間の無駄だ。