俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
軽くなった身体を実感して、光を感じる。
心地よい眠りから、覚めようとした俺の耳は、不快な音を拾った。
眉を顰め、薄っすらと目を開け、声のする方へ顔を向けた。
朧げになっていた影が濃くなり、俺の額の汗を、冷たく冷やしたタオルで拭いてくれていたのだろう、人の姿がハッキリと形を現した。
刹那、俺は自分の目を疑った。
「ごめんなさい、煩かったですよね」
目を開けた俺に、申し訳なさそうに眉を寄せた、可愛らしい、と言う表現が似合う女神がいた。
(…… 確かに目覚めたはずだが、俺はまだ夢を彷徨っているのか? )
何度か、パチパチッと瞬きをして、彼女を見つめると、彼女も身を掲げ、俺の顔に影を落とし、見つめ返してくる。
なだらかな撫で肩、背はそれ程高くないが、血管の浮く様な白い手足、クリクリとした幼さを醸し出す黒い瞳が可愛らしい。
いま咲いたばかりの白い百合の花のような、楚楚とした艶かさを含んだ女神が目の前にいた。
クッっと、息を呑む。
(…… これは俺のだ!!)
本能的な直感でそう感じた。
(欲しい、欲しい、絶対に手に入れる!)
心の奥底からブワッと、熱い想いが溢れて来た。
キラキラと、ほのかな暖かい光を纏って彼女は俺だけを見つめている。
女神が動けば光もユラユラ揺れる。
(綺麗だな…… )
声を掛けたくて、口を開いてみるが、熱で乾いた喉がヒリ付いて、上手く音にならない。
「大丈夫ですか? アミールさん」
(…… あぁ、この声だ。 この、包み込む様な暖かい声に、俺は呼ばれ、励まされ、何度救われたか…… )
石油王と称されてから、頼られる事はあっても、手を引いて俺を包んでくれた人など一人もいなかった。
兄のカミールは兄弟だから例外だが、彼女のそれとは別物だ。
カミールは仲間の様なものだか、心の奥底から求めるこの感情は、彼女を求めている。
(魂の対を見つけた!!)
そう心が叫んでいる。
「…… イラーハ…… 」
俺の女神…… 決して離さない。
仄暗い影から、俺を引き戻したお前には一生、責任を取って貰うからな、覚悟しとけよ。
こうして、俺の執着は始まった。