俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました

「アミール! 体調はどう? 」

「…… 何の用だ? 」

 カミールが退院してからというもの、アイシャは毎日、毎日飽きずもせず、病室にやってくる。

 病人を訪ねると言うのに、香水をこれでもか、と思う程、プンプンと匂わせてるから、余計に気分が悪くなる。

「アミール、私、婚約指輪はハートにカットされた指輪が良いわ。 ね、ここに職人を呼んで一緒に選びましょうよ」

 ウィルス感染を懸念して隔離されてると言うのに、何言ってるんだ、コイツは?!



「一緒に住む家は…… ちょっと高くなっちゃうんだけどね、ここと、NY、それにイタリア辺りにも、別荘として良い物件を見つけたのよ」

 腕を絡めて上目遣いで、意味のわからない妄想を語るが、毎回ベタベタされて、気持ちが悪い。


(一花になら、どんなに触られても平気なんだが…… 。 はあーっ…… 一花不足で辛い…… )

しかも……

「あの女の事、調べたわよ」

 そう言って、一花に関する身上調査表を渡して来た。

「は? 何、勝手な事してんだ!! 」

(一花に関する事を、俺より先に知るなんて…… ! 解せない! それは、俺の役目だぞ?! )

 俺は、悔しくて、眉間に深い皺を寄せ、アイシャを睨みつけた。

「思っていた通り、あの看護師は、あなた達には相応しくないわ」

 調査表の、家族構成の欄を指差して、アイシャは冷笑した。

「どう言う、意味だ? 」

 調査表を奪い取る。 
家族構成… 無し。 
施設育ちと、記されていた。

「…… 施設育ち…… 」

その記実に、グウッ、息を呑み込んだ。

 「これで、わかったでしょ、あの看護師の育ちが悪いって事。 どうせ親も借金とかで育てられなくて子供を捨てたのよ。 苦労して育ったのかも知らないけど、常識知らずなのも納得だわ」

 相変わらず、アイシャはギャーギャーッ何か騒いでいたが、俺の頭の中は一花の事で一杯で、それどころではなかった。
 

(ああ…… 、施設だなんて、男が一杯いただろう?! 俺の可愛い一花が、ほかの男とひとつ屋根の下で何年も過ごしていたなんて、羨ま…… いや、許せん! 親がいないのがなんだ! これからは俺がデロデロに甘やかしてやる!! )


「…… で、ね、私、式は早い方が良いと思うの。 白のドレスでバージンロードを歩くの。 ね、良いでしょ? 」


(白のドレスか…… 色の白い一花にはよく似合うだろう…… 、そうだな、俺が退院したらまずは婚約だな…… )

 一人、ニヨニヨしながら、一花に逢える日を指おり数えたのは言うまでもない。
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