まどかな氷姫(上)~元妻は、愛する元夫からの愛を拒絶したい~

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「私は夢喰いって一族の末裔なのよ」

「……………夢喰い」


彼女を室内へと案内し、テーブルを挟んで、向かい合う。

傍らではまどかが3人分の麦茶を並べていた。

…………ん?あれ、ここ、私の家だよね。

初めてこの家に来たというのに手際よく、さらには給仕の姿が私よりも様になっているのは何故だろう。


まどかが私の隣に腰を下ろすと、花田さんは続けた。


「かなり昔に、西から日本に入ってきたらしくて、今では大した力も残ってないんだけどね」


ほら、女にしては背も高いでしょ?と、口元を緩めながら彼女が笑う。


確かに、彼女の『めりはりぼでぃ』は日本人離れしている気がする。納得だ。決して、特別私が断崖絶壁なわけではないのだ。そうなのだ。

私がうんうんと頷いているのを見て、彼女は可笑しそうに声を上げてから、


「しらたまちゃんの傍にいる近衛君なら理解できると思うけど」


そう前置きして、彼女は私と自分の方を順番に指さした。


「しらたまちゃんや私たちって、今ではかなり普通の人たちの中に混ざって生活しているでしょ?」

「……俺はたましか知らなかったし、あんたのことはさっき初めてそうだと知ったけど」


猫を被ることを止めたまどかが、小さく頷く。

花田さんは自嘲するように笑みを浮かべた。


「まぁ、確かに絶対数がかなり少ないから、そうなって当たり前なんだけどね。とにかく私たちって、異人って呼ばれる存在らしいの」

「………異人?」

「そうよ」


言葉を反芻したまどかに、花田さんは厳かに頷いてから、


「生まれながらにして、普通の人とは少し違う力を持っている人間のこと。往々にして、普通の人々の輪からはみ出してしまうことが多いの。しらたまちゃんは聞いたことなかった?」


話を振られて、私は身を強張らせた。周りから寒い、冷たいと怯えられた経験を思い起こしながら、正直に答える。


「私、家族いなくて。昔の記憶はあまりないから……」

「え」

「あらあら」


二人はそれぞれの反応を示す。

まどかは気づかわしげに、花田さんはあっけらかんと。


その様子からも、常人と異人の違いを感じた。

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