京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

間話②


珠美(たまみ)叔母さーん」
「麻弥ちゃ〜ん、久しぶり〜」

 きゃー、と両手を合わせ、女子二人は再会を喜んだ。

 ホテルのラウンジで待ち合わせ、お茶とコーヒーを注文する。

「はい叔母さん、これ約束のFENTのチケットー!」
「あ〜ん、もう。麻弥ちゃん大好き〜」
 自分の好みを良く分かっている可愛い姪を、珠美はぎゅうと抱きしめた。

 千田 珠美は史織の母の名前である。
 この度ミッション終了を言い渡され、約束のブツを受け取った。チケットに頬擦りしながら、珠美は娘へ感謝の念を送る。

「そういえば〜、調査はどうだったの〜? 結局〜、四ノ宮のお坊ちゃんは浮気者だったのかしら〜?」
「うーん、よく分からないけど違うみたいよー? ていうか、ママから言われたんだけどー、私のお見合い相手変わっちゃったんだよねー」
「あら、そうなの?」
 まあ、と珠美は口に手を添え目を丸くする。
 しかしこちらの思いとは裏腹に、麻弥子の口元はにやけている。
「でもー、実はそっちの人の方が私のタイプでー……」
「え、嘘。いや〜ん、詳しく聞かせて〜?」

 浮かれる麻弥子にその手の話が大好きな珠美の頭からは、史織がもう四ノ宮家へ潜入捜査の必要が無い事など……

「SHAPのー、ユン様に似てるのー」
「きゃ〜! 素敵じゃな〜い! 写真は? 見せて見せて〜!」
「うふふ、実は彼もこのお見合いに乗り気で〜……」
「やだ〜、もう彼だなんてヒューヒュー♪」

 ……花咲く話の向こうに遠く飛んでいき、すっかり見失ってしまったのだった。
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