スノー&ドロップス
 昨日、鶯くんとキスをした。ほんの数秒、軽く触れただけでも胸が焼けるほどに熱くて。星を掴むような遠い幻想だと思ってきたことが、現実になった。

 出口の見えない夜空へ踏み込んでしまった気分。
 恥ずかしくて、でも嬉しくて。ふと悲しくなって、不安が降りてきて、怖い。

 今まで頼れる兄と素直な妹として、親の前に出ていたから。どんな顔をして接したらいいのか。鶯くんが何を考えているのか、分からなくなった。


「友達……ね。まあ、一歩前進ってことで、喜んでおく」

 ハハッと静かに笑って、藤春くんはするりと手を離す。
 あれ……? なにか、答えを間違えてしまったのだろうか。

 チクリと針を刺したみたいに、胸の奥が疼く。このヒリつくような痛みに、どんな意味があるのだろう。

 となりでスマホが鳴って、藤春くんが画面を見せて来た。

「三限目終わったみたい。三嶋さんたちが荒ぶってる」

『雪ちゃん、朝来てたの? 三嶋が見たって言ってたんだけど!』

『会いたかったよー!』

『体調不良? 明日は来る?』

『青砥さんもいなくなったし。無断早退らしいよ』

 グループトークらしいその場面は、現在進行形で文字が増えている。

『まさか、一緒じゃないよね?』
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