スノー&ドロップス
***

「鶯祐って、好きな子とかいないの?」

 十二月に入る頃、夕食中のなに気ない会話にお茶をこぼしそうになる。むせ気味に咳をすると、お母さんが「大丈夫?」と笑った。

「なんで?」

 一度箸を止めた鶯くんは、顔色を変えることなく聞き返す。

「なんとなくよ。そうゆう恋愛話って、鶯祐から聞いたことないなぁと思って」

「そんな話、親にしないよ」

「そーう? 気になるけどなぁ」

 陽気な口調のお母さんの隣で、クリームシチューが喉を通らない。もぐもぐと口を動かして、ようやく飲み込めた。

「茉礼も、もしいるならあとでこっそり教えてね」

 楽しそうな空気は、テーブルの左右で真っ二つに分かれている。鶯くんと目が合ってから、すぐにお皿へ視線を落とした。息をするタイミングが、わからなくなる。

 夕食を食べ終えて二階へ戻る途中、鶯くんに引き止められて部屋へ入った。パタンとドアの閉まる音に、ビクッと肩が反応する。

 すっきりと片付けられている空間で、立ち尽くす私。「座ったら?」と促されて、カーペットの床へ膝をつけた。

 あの頃は、この大人っぽい匂いも、並んで肩が触れるだけで淡い感情があふれていたのに、今は違う意味で心臓が破裂しそうだ。
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