スノー&ドロップス

幸せの雫は死を望む

 二月もあと一週間となった頃、冬の寒さはピークを過ぎようとしていた。少しずつ春へ近づいてくる季節に、一人だけタートルネックで完全防備はやたら目立つ。

 白い髪と碧眼に加えて、黒い布で首を覆っているのだから、クラスメイトたちは放っておかない。質問の嵐を軽くかわして、藤春くんは窓側の席へ着く。

 気になっているのは、私も例外ではない。ギリギリ校則違反ではないようだけど、昨日はそれなりに温かい気候だった。

 なにか見られたくないものでもあるのかと、勘繰ってしまう。

「雪ちゃん、今日遊びに行こうよ」

「いいよ」

「えー、あたしが先に約束してた!」

「みんなで行けばいいじゃん」

「ダメ。今日はデートだから!」

「ずるい! じゃあ私も明日デートする」

「わかった、順番ね」


 最近、藤春くんは変わった。女子たちに囲まれているのは元からだけど、神社で偶然会ったときを境にデートばかりしている。
 私へ向けていた純粋な表情は、幻だったのかもしれない。

 こんな息の詰まる教室にはいたくない。おもむろに立ち上がり、一番後ろから藤春くんの席の横を通る。

 何を期待していたのだろう。視線は合うことなく、女子にキラキラした笑顔を振る舞う彼を確認して、私は教室を後にした。
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