スノー&ドロップス
 ーーこの状況を、なんとかしなければ。

 ノックもなしに、おもむろに開くドア。波打つ心臓を抑えながら、私はベッドへ雪崩れ込んだ。

「……茉礼、部屋にいたの?」

「あ、熱くて、ベランダに……」

 とっさについた嘘が、胸の中でずっしりと重みを増していく。

 誰かと話さない。触れない。目を見せない。いくつもの約束を破って、偽りの言い訳を塗り重ねて。
 普通な顔をしていられるほど、上手く生きてきていない。

 夢と同じようにベッドの(はし)に腰を下ろし、鶯くんは剥がれかけたシートを優しく取った。

 後頭部に大きな手が置かれ、そのまま顔が近付いて長い睫毛が触れそうになる。胸が騒ついて、肩がすくんで。

「熱はなさそう。もう少し寝てなよ」

「……うん」

 包み込むように頭を撫でられ、胸がキュッと狭くなった。不意に夢のキスを思い出して、顔が火照ってくる。

 それを隠すように、私は頭から布団を被った。鶯くんが出て行った後も、鼓動がうるさいのは何でだろう。
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