お砂糖味のキス
お砂糖味のキス

押さえていた気持ち

部屋の前まで来ると,奏詞は珍しく扉を荒々しく開けた。

それに驚く暇もなく,今度は私の腕を引っ張り,部屋に引き入れる。



「ひゃぁっ!?」



声をあげるとドスンっという音が耳に響いて,目を開けると私は奏詞に抱き締められていた。

奏詞の片手は床についていて,どうやら倒れるようにしてこうなったようだ。

勢いをつけすぎたのだろうか?

そうであったとしても,これは少しどころかかなり恥ずかしい。

思えば奏詞から抱き締められたことなどほとんどない。

あっても幼いとき。

事故かと思ったそれも,間違いだと知らされる。

私を抱き締める力が強くなったと思ったら,ぎゅうっと両手で抱き締められていた。



「奏詞?」



本当に何かあったのかと見上げて,ハッと息を飲む。

奏詞の瞳がゆらゆらと揺れていた。



「さっきの人誰なの? 古都は信じられないかもしれないけど,僕は君の兄になった覚えはないよ。~っずぅっと,大事にしようと,僕が守りたいと思って……! ずっと,古都だけは誰にもあげたくなんかないんだ!」

まるで水をいれた風船が割れてしまったかのように,気持ちが溢れるかのように訴える奏詞。

私を見つめるその瞳が,とても,綺麗だと思った。

想いを告げるなら今だとも……
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