8つの怖い話
それどころが掴まれている手の力は次第に強くなってきて、痛くなってきていた。


「おい、いくらなんても力強すぎだろ」


実が顔をしかめた時、和輝が真っ青な顔をして数歩後ずさりをした。


実の体から和輝が離れる。


それでも腕はしっかりと掴まれたままだったので「おい、お前--!」と怒鳴ろうとしたときだった。


和輝はロッカーよりもかなり遠くにいた。


その距離では実の腕を握りしめることなんてできない。


なによりも和輝は両手で自分の体を抱きしめるようにして震えを押さえているから、実の腕を掴むことなんて不可能だった。


その事実に気がついた瞬間、実の顔から血の気が引いていった。


カタカタと震えながらゆっくりと視線を戻していく。
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