8つの怖い話
そしてようやく、自分の腕を掴んでいるものがなんなのか理解した。


それは赤いテープがはられたロッカーの中から伸びる、真っ青な手だったのだ。


その手はガッチリと実の腕を掴んでいて離さない。


「おい、嘘だろ」


いつもは乱暴な口調の実の声が、恐怖で震えた。


手は実の体をロッカーの中へ引きずり込もうと力を込める。


実の体が引きずられ、ロッカーに一歩近づいた。


「やめろ!!」


必死で手を振りほどこうとするがビクともしない。


掴まれている手の先は血の気を失って紫色になってきている。


すごい力で引っ張られ、実の体はよろめいた。


「実!!」


呆然と立ち尽くしていた和輝が叫び声をあげて駆け寄った。


実の腰を抱きしめるようにしてロッカーとは反対方向へ引っ張る。
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