虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 こんなとき、みんなはどう反応するんだろう。
 跳び上がって喜ぶ?
 静かに微笑んで、彼を抱きしめる?

 私はそのどちらでもなかった。

 頭の中が真っ白になってしまって、ただぼんやりと、九条くんが差し出してくれたエンゲージリングの輝きを、焦点の合っていない目で眺めていたんだと思う。

「あの、理恵……」

 九条くんの、とまどったような声がする。

「返事、聞かせてくれないかな」

 そんな、返事なんて──。

「……はい」

 私にイエス以外の返事が、あるわけないよ、九条くん。

「よろしく……お願いします」

 私で良ければ。
 本当に、私なんかで良ければ。
 一生あなたのそばに、いさせてください。

「良かった」

 九条くんがほっとしたように、笑った。

「理恵、何も言わないから、嫌なのかなって心配になったよ」

「そんな──!」

 そんなのあり得ない、という言葉が喉に引っ掛かって、代わりに急に、涙が溢れ出した。

「理恵……?」

 心配そうに顔を寄せる九条くんに、そうじゃないというふうに首を振って、私は彼の首に腕を伸ばして、泣きながらキスをした。

「ありがとう、まあくん」

 言った後に、私は心の中で、ふるふると首を振った。
 未来の旦那さまに、いつまでも『まあくん』は失礼だから。

「愛しています、正臣さん。一生あなたのそばに、いさせてください」

 なんとかきちんと、言葉にできた。
 
 そう言ってぼろぼろ泣いている私を、九条くんは優しく微笑んで、抱き締めてくれた。

「愛してるよ、理恵。今までも、これからも」

 九条くんがこれまで何度も囁いてくれた、愛の言葉。
 でもこの瞬間の言葉は、輝きも重みも、全然違う。
 
 彼の誓いの言葉だから。
 美しいハワイの風と光と潮騒の中で、この楽園の島を司る女神に、彼が誓ってくれた言葉だから。

 涙が、止まらなかった。
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