虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
私は実家に連絡を入れて、九条くんと合流してからそちらに向かうと伝えた。
九条くんはパリのシャルル・ド・ゴール空港から機体を移動させてきたばかりで、
現地時間の明日の午後、その機体に乗務して羽田に向かうのだそうだ。
時差の関係もあって、羽田に着くのは明日の夕方になるという。
お母さんにその予定を、スマホ越しに説明すると、
『わかったよ、まあくんによろしくね』
上機嫌でそう言ってくれた。
予定では私は先に実家に着いて、そこで九条くんが来るのを待つことになっていたのだけど、もう一泊都内で過ごしてしまっていたし、一刻も早く九条くんに会いたくて、彼の到着を羽田空港で待つ気になっていた。
私はそれまでの時間を、九条くんと二人で瑠美おばさんの到着を待った、お台場の大日本航空の系列ホテルで過ごすことにした。
羽田のターミナルホテルに移動してもよかったのだけど、前回お台場のホテルを利用したとき、併設のスパやフィットネスがすごく良かったので、そこでボディメンテナンスをして、身体をすっきり整えて九条くんをお迎えするつもりだった。
さすがに一人でスイートルームを使うような贅沢はできなくて、ホテルのフロントでシングルルームのカードキーを受け取ると、私は早速フィットネスルームで走り込んで、お食事会のアルコールを身体から抜いた。
そして、次の日の早朝。
『今から向かうよ。待っていてね、理恵』
ロサンゼルスを離陸する直前の九条くんと、最後の会話を交わした。
「気を付けてね、まあくん」
私の言葉に、九条くんはスマホ越しに、大丈夫だよ、と明るい声を返してくれた。
スマホを置いて外を見ると、窓の外の東京港は、朝の光に白く染められていくところだった。
九条くんに会えるまで、あと半日。
私はそれまでの時間に、またフィットネスやスパの予約を入れて、できるだけ部屋に閉じこもらないように気を付けていた。
そして、チェックアウトの手続きを済ませてから、ホテルのレストランでランチをとって、時間までカフェでゆっくり過ごして、そろそろ羽田に移動しようとしていたときだった。
急にスマホが鳴った。紫月さんからだった。
タップして耳に当てると、紫月さんのうわずった声が飛び込んで来た。
『理恵っ、今どこにいるの?! 正臣が──!!』
目の前が真っ暗になった。