虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

「いいわね、素敵じゃない」

 紫月さんが声をかけてくれる。

「その話、御倉も乗らせてもらうわ。必要な分、いくらでも用意するわよ」

 九条くんは軽く苦笑いしたけど、私には別に、紫月さんにお願いしたいことがあった。

「紫月さん、ありがとうございます。でも紫月さんと直人さんには、あらためてお願いしたいことがあります」

「あら、あらたまって何かしら?」

「大日本航空を喰い物にしている、富永本部長と嶋田常務をなんとかしてもらいたいのです。そしてこの二人の後ろにいる、富永副幹事長と三橋大臣も」

「理恵……」

「決して復讐などではありません。でもこのような人たちを放置していては、また悲しみが繰り返されてしまいます」

 紫月さんと直人さんが、大きく頷いた。

「紫月さん、直人さん。お二人の身の安全が最優先ですが、その許す範囲で、お二人が必要と思われる措置を取ってください。二度と悲しみが、繰り返されないように」

 私はそう言って、二人を強く見つめた。

 紫月さんも直人さんも、しばらくじっと私を見つめ返していた。
 すると急に、直人さんが笑いながら、傍らの紫月さんに声をかけた。

「聞いたか紫月? 九条の花嫁は、俺たちをその気にさせる言葉をよくご存知だ」

「いいわね、ワクワクする。こんなに楽しいのは久しぶりよ」

 紫月さんも、美しい面立ちに不敵な笑みを浮かべて、私にこう言ってくれた。

「見てなさい、理恵。あなたに御倉の本当の力を見せてあげるわ」

 そして紫月さんは、榊さんに向き直った。

「あなたにも存分に働いてもらいますからね、榊」

「紫月さまの仰せのままに」

 榊さんはそう応えて、恭しくお辞儀をした。

 すると、藤堂社長が口を開いた。

「そうか……、ならば私は辞め時だな」

「社長……」

「事情はどうあれ、私は富永たちの与党とみなされている。事実、私は名ばかりの社長として、今まで奴等に頤使(いし)されてきた。君たちが掃き清めてくれる会社に、もう私のような男は不要だろう」

「何を甘いことを言っているんですか? 社長」

 九条くんが口を開いた。

「僕がすんなりと、あなたを赦すとでも思っているんですか?」
 
「まあくん……!」

「当然だ。どのような罰も受けよう」

 藤堂社長は九条くんの視線に、真っ直ぐ向き合った。

「聞かせてくれ、九条。君は私に何を望む?」
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