虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 ありきたりでも、丁寧に作られた料理は美味しい。なにより素材や調味料の質が、私たちが日頃手にしている物とは格段に違う。

 それよりも、食事で一番大切なのは、何を食べるかではなくて、誰と食べるかなのかもしれない。
 今、カウンターの向こうには九条くんがいる。
 そして食事を彩るお話も、真理と九条くんがいるから話題に事欠かなかった。

 私は美味しいブレックファストを食べ、楽しい会話に耳を傾け、そして笑った。

 こんな楽しい朝食はいつ以来だろう……。

「ねえ、まあ兄」

 真理が言った。

「まあ兄、ここに一人で住んでるの?」

「うん、訳ありでね」

 九条くんは苦笑いを浮かべた。

「でもこれだけ広いと、お掃除とか大変でしょう」

「うん。仕方ないから、ハウスキーパーを頼んでる」

「ふうん、そう」

 すると真理は、びっくりするようなことを口にした。

「じゃあさ、理恵を雇わない? なんなら、住込みで」

< 30 / 235 >

この作品をシェア

pagetop