虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜
真理の物言いに、硬直してしまった。
「昨夜、あなた寝室を出て戻って来なかったよね。そしてまあ兄は、明け方にシャワーを使ってた。つまり……そういうことだよね」
「ま、真理、あなたずっと起きてたの?!」
「私はアクトレスだからね。たぬき寝入りなんてチョロいもんよ」
そして真理は、すごく人の悪い笑みを見せて、
「で、まあ兄はどうだった? まあ兄、そっちの方も上手そうだよね」
私は思わず、「いい加減にして!!」と叫んで、真理に昨夜のことを話してしまった。
真理は最初こそ興味津々に話を聞いていたけど、昨夜の一部始終が分かると急に怖い顔になって、
「このバカ理恵!」
と、怒鳴られてしまった。
それから二人ともそっぽを向いたまま、目的の駅に着くまで口をきかなかった。
地下鉄のシートに揺られながら、私は考えていた。
真理の言うこと、腹立たしいけど理解はできる。
待つだけでは何も得られない。
恋も愛も、競い合わなければ勝ち得ない。
そうだろう、そうかもしれない。
でも、じゃあ、恋も愛も幸せも、
誰かの涙の上にしか、成し得ないものなのかな。
相手をがんじがらめにしたり、すがり付いてまでして手に入れたものを、愛や幸せって、呼んでいいのかな……。
なぜだか昨夜の、九条くんの寂しそうな笑顔を思い出していた。