虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 真理の物言いに、硬直してしまった。

「昨夜、あなた寝室を出て戻って来なかったよね。そしてまあ兄は、明け方にシャワーを使ってた。つまり……そういうことだよね」 

「ま、真理、あなたずっと起きてたの?!」

「私はアクトレスだからね。たぬき寝入りなんてチョロいもんよ」

 そして真理は、すごく人の悪い笑みを見せて、

「で、まあ兄はどうだった? まあ兄、そっちの方も上手そうだよね」

 私は思わず、「いい加減にして!!」と叫んで、真理に昨夜のことを話してしまった。
 
 真理は最初こそ興味津々に話を聞いていたけど、昨夜の一部始終が分かると急に怖い顔になって、 

「このバカ理恵!」 

 と、怒鳴られてしまった。

 それから二人ともそっぽを向いたまま、目的の駅に着くまで口をきかなかった。

 地下鉄のシートに揺られながら、私は考えていた。

 真理の言うこと、腹立たしいけど理解はできる。

 待つだけでは何も得られない。
 恋も愛も、競い合わなければ勝ち得ない。
 
 そうだろう、そうかもしれない。
 
 でも、じゃあ、恋も愛も幸せも、
 誰かの涙の上にしか、成し得ないものなのかな。
 
 相手をがんじがらめにしたり、すがり付いてまでして手に入れたものを、愛や幸せって、呼んでいいのかな……。

 なぜだか昨夜の、九条くんの寂しそうな笑顔を思い出していた。
< 33 / 235 >

この作品をシェア

pagetop