虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 長い抱擁のあとに、九条くんは私の身体を抱き上げ、立ち上がった。

「理恵……愛してる」 

 私はこくりとうなずくと、九条くんの首に腕を回した。

 私を抱き上げたまま、九条くんはリビングを出ていく。

 なにも怖くない。ただ、愛しいだけ。
 私は目を閉じて、九条くんの胸元に、頬をこすりつけた。
 
 九条くんが扉を開けて、私たちはベッドルームに入った。
 落ち着いた色調の壁に囲まれて、部屋全体に広がるような大きなベッドに、純白のシーツが掛けられている。

 九条くんは私をベッドにゆっくり降ろすと、部屋の明かりを淡いフットライトだけにして、シャツを脱いだ。

 背の高い九条くんの身体が、私に重なってくる。熱い吐息が、私の首筋をくすぐった。
 
 彼の手が私の服の裾から入って、私の身体をさぐり出したとき、私は思わず小さな声を漏らした。

 九条くんの大きな手が、私の身体を愛撫しながら、服をゆっくり脱がせていく。 
 彼の愛撫を受け入れながら、私も彼が脱がせやすいように、身体を動かしていた。

 と──。

『綺麗だよ、早川君。とても素敵な身体だ──』

 耳元によみがえる、あのおぞましい声。

『そうだろう、こうしてもらうのが嬉しいんだろう。そう、恥ずかしがらずに、全部私に委ねなさい──』

 たちまち身体が固くなって、肌が粟立つ。

『早川君、君は私のものだ。全部、私に──』

(田村部長! なんで──!!)

 私を愛しんでくれる九条くんのぬくもりの向こうに、私はあの、忌まわしい影を見てしまった。 
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