虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 黒く、まとわりつく影。

 私をなぶって、弄んで、身体も心も穢しつくした、澱んだ瘴気のような記憶。

『早川君。君は私のものだ』

 いやだ、来ないで、
 私に触れないで、
 もう私を、自由にして──!

「いやっ、やめてっ!」

 はっと顔をあげると、凍りついたような九条くんの顔があった。

「理恵……」

「まあ……くん……」

 九条くんは、軽く蒼ざめたような表情だった。

「ごめん……理恵」

 九条くんはうなだれると、私から身体を離して、立ち上がった。

「シャワー、浴びて来るよ」

 九条くんは、信じられないくらいに弱々しい笑顔を浮かべていた。

「理恵。俺のこと、嫌いにならないで。シャワーを浴びたら、俺は別の部屋で寝るから」

 私は手を伸ばしかけたけど、喉が凍ったように動かなくて、なにも言葉が出なかった。

 九条くんはベッドルームから出て行った。

 一人残された私は、白いシーツを頭から被って、泣いた。
 
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